ポルトガルとポルトガルワインについて

2020年の年初からほぼ1年半、世界中がコロナ禍に見舞われ、大変な状況が続いています。皆さんにとっても日常が一変してしまったことと思います。当方でもワイン試飲会のみならず、あらゆるイベントが中止となりました。どうやってポルトガルワインの美味しさを伝えていこうかと悩む日々でした。そのうちにオンラインでセミナーをやっては?と声をかけられたことがきっかけとなり、2021年5月から実施しています。

最初は旅行会社さんとのタイアップで、ポルトガルワインの特徴をお話ししました。旅行好きの方が実際に現地に行けない中、画面を通して生産地の様子などお伝えすることができました。

サロンという長い間集っているワイン仲間の会があり、通常ならテーマに沿ったワインとお料理を定期的に楽しんでいました。集まることができないので、オンラインでダン・バイラーダ地域をテーマにしたセミナーを行いました。画面越しに雑談できたことも嬉しかったです。

また、酒販店さんから楽しい企画−ポルトガルの生産者と、お客様と播磨屋を結んでのセミナー&オンライン飲み会−を提案して頂きました。「ポルトガルのお料理レシピ集」でもお馴染みのCaves Arcos do Rei社のRuiさんの協力を得て、実現することができました。セミナーで、Ruiさんが、「いつかまたface to faceでワイン会が出来るようになることを願っている」と話していました。このような状況下だから実現できた会もありますが、ワインはワインそのものを楽しむだけではなく、やはり皆で語らいながらひとときを過ごす時間も大切な要素です。そんな時間を再び過ごせるようにと願いをこめて、セミナーの一端をご紹介したいと思います。

ポルトガル

ポルトガルは日本から約1万3千キロ離れたユーラシア大陸の西の果て、イベリア半島に位置する国で、日本の国土の4分の1ほどの大きさ(91,985km²)です。ユーラシア大陸最西端に位置するロカ岬(北緯38度47分 西経9度30分)にはローズ大理石の石碑があり、ポルトガルを代表する詩人、ルイス・デ・カモンイスの叙事詩「ウズ・ルジアダス」の一節から「ここに地終わり海始まる」と刻まれています。

ポルトガルと日本の位置
約13,000km の距離にあるポルトガルと日本

人口は約1,000万人、東京都が約1,300万人強ですので、東京都より少し少ない規模です。 日本でもよく知られているポルトガル人といえばサッカーのクリスチアノ・ロナウド選手でしょうか。2021年現在、国連の事務総長はグテーレス元首相が就任されています。

国内に17の世界遺産があり、観光地としても名を馳せていたポルトガルもコロナ禍は免れず、ロックダウンを繰り返していました。現地ともオンラインでやりとりするようになり、ロックダウンの時は、画面越しに子どもたちが出てきて、挨拶してくれました。子どもたちも慣れたものです。

日本とのつながり

教科書でご存じのとおり、日本との関係は1543年、種子島にポルトガル人が漂着したときです。鉄砲とともに「ちんだ酒」いうワインが織田信長に献上されたと言い伝えられています。ポルトガル語で赤を「ティント」といいますので、どんな葡萄酒だったかなと想像するだけでロマンがありますね。

長興寺所蔵の狩野元秀画『紙本著色織田信長像』、神戸市立博物館所蔵の17世紀初期に描かれたフランシスコ・ザビエル像、神戸市立博物館所蔵の狩野内膳作『南蛮屏風』
(左)狩野元秀画『紙本著色織田信長像』-長興寺所蔵   (中央)17世紀初期に描かれたフランシスコ・ザビエル像-神戸市立博物館所蔵   (右)狩野内膳画『南蛮屏風』-神戸市立博物館所蔵   Licensed under Public domain via Wikimedia Commons

日本のワイン輸入量

日本で有名なのは何と言ってもフランスワインですね。そしてチリ、イタリア、スペイン、ドイツ、アメリカ、オーストラリアといったところがよく目にするワインでしょうか。ポルトガルワインも奮闘していて、毎年ニュージーランドと10位、11位を競っている状況です。

ワインの特徴

マルケス・デ・ポンバル侯爵 肖像
マルケス・デ・ポンバル侯爵 肖像(「Real Companhia Velha 250周年記念誌」より)
歴史のあるワイン
ぶどう栽培がポルトガルに伝わったのは紀元前5世紀のことと言われています。8〜11世紀にはアルコールを禁止するイスラム教徒の侵入により、一時衰退しますが、キリスト教徒の台頭で、再びワイン造りが行われるようになりました。16世紀になると、イギリスとの間で貿易が盛んになりました。英仏戦争などで、イギリスのフランスワインの輸入量が減る一方、ポートワインの輸出は増える1756年、時の首相、マルケス・デ・ポンパルがドウロ生産地指定の規制を設けました。これが世界初の原産地呼称法です。
自国品種を大切にしている
パウロ・ラウレアーノ ワインのコルク
「SO CASTAS PORTUGUESAS(ポルトガルのぶどうだけ)」という生産者のメッセージが込められたコルク
カベルネ、ピノ・ノワール、シャルドネといった国際的に有名な品種も栽培されていますが、250種以上もあるといわれている自国品種を使ってワイン造りを行っているのもその特徴のひとつです。「ポルトガルのぶどう品種」のページで北部、中部、南部の代表的な品種をまとめていますが、こちらで紹介しているもの以外に、ルフェテ(ドウロ)ティンタ・グロッサ(アレンテージョ・ヴィディゲイラ)など、その土地にしかない、レアものもあります。また、シノニム(地域によって、品種の呼び名が変わり、同じ品種に異なる名称が使われている)が多いです。
地域によって、特徴がある
国土が南北に長く、土壌や気候も異なっているので、各銘醸地ではそれぞれ特徴のある個性豊かなワインができ上がります。

ポルトガルのワイン産地

それでは、産地を順にみていきましょう。

ポルトガルの地図と産地
ポルトガルの地図と産地
※クリックすると大きい画像でご覧いただけます
ヴィーニョヴェルデ
緑(verde)のワイン(vinho)の意ですが、緑色のワインというわけではありません。若々しく、爽やかで飲みやすいアルコール度数の少ない微発泡タイプから、イベリア半島の重要な品種、アルヴァリーニョ主体のしっかりした白もあります。播磨屋ではヴィーニョヴェルデのサブリージョン、アルヴァリーニョの本場、モンサオン・メルガッソからアルヴァリーニョ主体のヴィーニョヴェルデも入れています。
ドウロ
ドウロ川に沿った山間地域、斜面を耕してつくられた段々畑でぶどうを栽培しています。2001年に世界遺産に登録された美しい景観を誇る地域です。土壌はシスト(片岩)が主体で、痩せた土地です。その昔、四駆などない時代は作業が大変だったことでしょう。ドウロ川が大西洋に注ぐ、ポルトの街の対岸、ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアにReal Companhia Velha社のミュージアムがあり、このころの様子が見学できます。古くからポートワインの生産地として有名です。「液体の宝石」と言われるポートワイン、世界三大酒精強化ワインのひとつです。ポルト(港の意)から輸出されていたため、ポルト(ポート)と呼ばれています。ポートワインインスティテュート(IVP)によって、生産から販売までを厳格に管理されています。ひとつひとつに保証シールが貼られています。河口にはかつて上流のワイン産地からワインを運んだラベーロという小舟が繋留されています。現在は広告の役目を担っているようです。ドウロ地域ではポートだけでなく、良質のスティルワインも造られています。
世界遺産のドウロのぶどう畑とシスト
(左)ドウロ川と世界遺産のぶどう畑   (右)シスト
ダン
ダンは比較的早くに日本にその名を知られた地域です。ご自身の名前と似ていることからサンタ・クルスに1年4か月滞在した作家の檀一雄氏が「酒ならダン、…一体そのダンを何百本抜いたのか、おそらく莫大な数量にのぼったろう。」とエッセイに書かれたことが発端となったと、我々も何回も引用させていただいています。ただそのころは荒々しいワインという印象がぬぐえませんでした。しかしながら、現在では「エレガント」といわれるワインに進化を遂げています。
雨量も多く、年間1200mm〜1300mmほどに達しますが、主に10月から4月までに降ります。ぶどうの生育期、収穫期には雨はほとんどなく、乾燥した気候ですので、ぶどう栽培に適しています。檀の土壌は花崗岩がほとんどを占めています。ワインを栽培している農家は比較的小規模なところが多い地域です。
バイラーダ
ダンの大西洋側に広がるバイラーダ(Bairrada)のブドウ栽培は、ポルトガル建国時にさかのぼるほど古く、歴史があります。土壌は粘土質を主体に、石灰岩質が混在していて、バイラーダの名前は粘土(Barro)と地区(Bairro)に由来しています。 バガと呼ばれる小粒で色の濃いぶどう品種を赤ワインに使用するのが特色です。 このぶどうから作られるワインも濃色で、酸とタンニンが強く、長期熟成に耐えるものです。ボディのしっかりした通好みのワインに仕上がります。 また、瓶内二次発酵のスパークリングワインも美味しく、特にこの地方の仔豚の丸焼きにぴったりです。播磨屋ではバガ100%のスパークリング、ブラン・ド・ノワール、そして、赤のスパークリングのご用意もあります。
レイタオンとスパークリング
レイタオンとスパークリング
セトゥーバル&パルメラ
この地域は首都リスボンから近く、大西洋に面した港湾都市です。特産品として、ポルトガルオイスター(牡蠣)とモスカテル・デ・セトゥーバルという酒精強化ワインが有名です。モスカテルとはいわゆるマスカットのことで、馥郁たる香りの甘口ワインとなります。食前酒あるいは食後酒としてお楽しみいただけます。詳しくは、「モスカテルの話」をご参照ください。
一方セトゥーバルの北に位置するパルメラは、イスラム教徒とキリスト教徒による激戦が繰り返された戦略上の要地。当時の面影が色濃く残る静かな町です。
アレンテージョ
アレンテージョは、オリーブ畑やコルク樫の大農園の広がる穀倉地帯です。近年次々と新たなワイナリーが誕生し、ポルトガルのワインの産地として注目されるようになったポルトガル南部の大半を占める広大なエリアです。
この地域の気候は、夏と冬の寒暖の差が激しいのですが、湿気が少なく、とくにぶどうの収穫時期にはほとんど雨が降りません。このため、収穫年によるワインの品質の差が少なく安定しています。夏の日中は灼熱の太陽が降り注ぎ、40度を超える日もあります。土壌は花崗岩、片岩、石灰質までバラエティに富んでいます。
8つのサブリージョンに分けられており、マイクロクライメットや土壌による違いが楽しめます。この地域はまた、コルク産地として知られています。ポルトガルのコルクの生産量は世界最大で50%(毎年20万トン)を占めています。コルク樫は植樹してから20年前後で成木へと成長します。 ポルトガルでは最初の皮を剥がす時期が9年未満は禁止されていますので、木の表面に白ペンキで番号をつけて管理、コルク層が再生する9年目の夏になると収穫します。コルク樫の寿命は大体150〜200年なので、1本の木で15〜18回ほど採取できる計算になり、資源保護という観点からも高い評価を得ています。
アレンテージョ地域の広大な畑
アレンテージョ地域の広大な畑
コルク樫の木と採取されたコルクの皮
コルク樫の木と採取されたコルクの皮
ピコ
ポルトガル本土から西へ約1,500kmの大西洋上に浮かぶアソーレス諸島は火山が起源で、9つの島から構成されています。中でも、二番目に大きいピコ島にある火山はピコ山といい、ポルトガルの最高峰で標高は2351mです。火山岩質の溶岩台地からワインが造られており、夏の強い日差しと水はけのよさから糖度の高いぶどうが生み出され、火山岩に含まれるミネラル分の豊富なワインとなります。潮風からぶどうを守るため、溶岩石を使った石垣がつくられるようになり、この景観が2004年にユネスコの世界遺産に登録されました。
ピコ島のピコ山と溶岩石の石垣のぶどう畑(世界遺産)
(左)ピコ島のピコ山   (右)世界遺産になった溶岩石の石垣のぶどう畑

料理との組み合わせ

料理とのマリアージュにもさほど厳格でなく、気軽にワインを楽しんでいる、ポルトガルですので、和洋を問わず、お楽しみいただけます。食前酒、食中酒、食後酒、いろいろなシチュエーションでお楽しみ下さい

和食とあわせて
和食とあわせて
お肉料理やデザートと
お肉料理やデザートと

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